僕はあがり症で、人と話すのが大の苦手です。
特に女の子の前では、男友達と比べるとぜんぜん話ができなくなってしまいます。
高校の頃、そんな僕でも初めて恋をしました。そして・・。
自分があがり症であることを、こんなにも情けないと思ったことはありません。今思い出しても切なくなります。
あがり症が酷く恋愛がまともにできない僕
人前でとても緊張する性格の僕でしたが、生まれて初めて本気で人を好きになりました。
僕が好きになったのは、校内一の美人で可愛いくって誰もが憧れる、付き合いたいと思う理想の女の子。
いつしか、そんな高嶺の花のことが気になって仕方なくなります。
でも、名前も知らない、どこに住んでいるのかも分からない。とにかく、その子とくっつきたい・・。
女子から話しかけられると黙り込んでしまう僕のあがり症
僕は小さい頃から人前でとても緊張し、上手く自分を表現することができませんでした。
大勢の人の前で話すときはもちろん、普通にクラスの人と話すのも緊張します。
特に女の子と話すときは、恥ずかしくなって表情がこわばり、黙り込んでしまいます。自分を全く出せないのです。
クラスで机をくっつけてグループになったときは、ほんとに何もできません。あがり症だけじゃなく、対人恐怖症も少し入っているのかも・・。
唯一、仲の良い男子数人とだけは普通に会話できます。
あがり症の僕が初恋したのは高校一年生
僕が初めて恋をしたのは、高校一年生のときでした。
その女の子は、他のクラスにいた、校内一の美人でした。
彼女はセミロングの黒髪に大きな瞳、白い肌にスレンダーなスタイル、とても大人びていて、そして とびっきりの笑顔が魅力的でした。
男子達は、彼女が通るたびに、「可愛いぃ~」と噂するくらい憧れの存在です。
僕は彼女を見るたびにドキドキしてしまいます。いつしか彼女のことが好きになっていたのです。
でも、何の接点もない僕が、彼女に話しかけることは当然できません。
ただただ、気になって彼女のことが知りたい一心で、友達にバレないよう遠まわしに彼女の情報を集めていきます。
「3組の○○さんって初めてみるけどどこの何中学出身かな?」
あくまでちょっと知りたいというスタンスで、さりげなく聞いていきます。
誰かに自分の胸の内を悟られたくないと思っていました。恋愛経験がなく恥ずかしさがありました。
遠くから見ることしかできない憧れの女の子
たまに、彼女と校内ですれ違ったときがありました。
すれ違ったときの彼女から放たれる雰囲気やニオイが僕を虜にしていきます。
それ以外で彼女に合う機会があるのは、集会があるときや、クラス合同で運動会など行われるときくらいで・・彼女のことを遠くから見ることしかできませんでした。
彼女は男友達も多く、よく男子に告白されていると聞きます。
それはそうですよね?とても大人っぽく、可愛いくて美人な女の子を、世の男性がほったらかしにするはずはありませんからね。
魅力的な彼女に恋に落ちない男子はいない!と言えるくらいの憧れの女の子。
僕ができることと言ったら、せいぜい彼女に目線をおくって自分の存在をアピールすることくらいでした。色んな男子にアピールされているんだろうなぁと思いながら。
その甲斐あってかどうかは分かりませんが、よく目が合うようになってきた気がします。
完全に妄想の域に入っていますが、そう思うことで自ら期待値を膨らませていました。
しかし時が経つのは早いもので、僕は彼女に近づくことができないまま、もう気が付けば高校最後の三年生です。三年なんてあっという間ですね。
そして、最後のクラス替えで奇跡的に、なんと、彼女と同じクラスになれたのです。
「こんな奇跡って起こることあるんだ~やったぁ~」と、嬉しくなって心の中で叫んだのを今でも覚えています。
憧れの彼女と急接近する僕の恋の行方
僕は彼女と同じクラスになって嬉しくって胸が高鳴りました。しかし同時に不安も感じていました。
ライバルが多い中、彼女に上手く自分をアピールできるだろうか・・。嫌われたりしないだろうか・・。他に好きな人がいるんじゃないだろうか・・。
考え出したら切がありません。
彼女と同じクラスになって嬉しい反面、不安もあった
奇跡的に彼女と同じクラスになった僕の、最後の高校生活が始まりました。
彼女と同じクラスになれば、もっと彼女のことを知ることができるし、話す機会も多くなり、付き合うことだって可能性としてゼロではないわけです。
でも、色々と不安もあります・・。
彼女は校内一の美人で、たくさんの男子からアプローチされる存在です。
そんな彼女が、あがり症で奥手の自分を相手にするのか?冷静に考えると不安でしかありません。
予想通り、自分に自信がない僕は、同じクラスになってもなかなか近付けずにモヤモヤするばかりの日々を過ごしていました。
「こっちが目線をおくったとき、おくり返してくれたのは気のせいだったんだ・・」
自分とは最初から不釣り合いなんだから、彼女のことを意識するのはもうやめようとも思いました。
実は僕、中学の頃からサッカー部に所属していて、高校でも続けていました。そして高校最後の県大会が控えていたのです。
「恋愛なんてやっている場合じゃない。最後の大会に集中しよう!絶対に県大会を突破するぞ!」
恋愛のことはひとまず置いといて、目の前のこと一生懸命になろう、と心に誓いました。
恋愛のことを忘れて部活に専念する僕にまたもや奇跡が・・
相変わらず、彼女との距離は遠いままでしたが、そのことを忘れるかのように、僕は部活動に没頭します。
そして迎えた最後の県大会。
無事にレギュラーメンバーに選出され、努力したことを発揮するときがやってきました。
苦戦しながらなんとか一回戦突破。そして無事、二回戦進出。
僕はこう見えて、スポーツができるタイプでした。スポーツだけは自信があったのです。
そして迎えた二回戦。試合は1対1の攻防戦。
ここでサプライズな出来事が起こります。
なんと、クラスメイトの女子と一緒に、あの憧れの彼女が試合の場に応援に来ていたのです(・・;)
「え?どういうこと?誰を応援しにきたの?」
ハーフタイム中、彼女の目線を恐る恐る確かめます・・彼女の目線は・・僕にありました(・・;)
「頑張って(^-^)」と声をかけてくれる彼女に、僕は初めてありったけの声を出します。
「あっ、ありがとう(#^^#)」
試合は残念ながら二回戦敗退でしたが、僕の高校生活はこれからが本番です。
「彼女と両想いになれた」
と、もう有頂天でした。勝手な思い込み、妄想の可能性があるにもかかわらず・・。
でも、彼女が僕のことを好意的に想ってくれていることには違いありません。
彼女が僕に送ってくれた好意的なアピール
彼女が僕を応援するために、試合を観に来てくれたことが嬉しくてたまりませんでした。
それからの彼女は、僕に対して好意をしめしてくれて、彼女なりのアピールをしてくれるようになります。
彼女は授業中に僕に話しかけてくれたり、笑顔で見つめてくれたり、休み時間に僕にお菓子を分けてくれたりしました。
「翔君、消しゴム貸して~」と、僕に笑顔で接近してくる彼女にもうぞっこんです。
そんな彼女ともっと親密になりたい・・その気持ちは溢れていましたが、緊張する性格もあって、クラスのみんながいる前で彼女と話すことはとても難しいものでした。
彼女と話せばみんなが注目するし、嫉妬する男子も絶対に出てくるのが分かっていたからです。
彼女が僕に接近するだけで、僕は今までにないほど赤面し、クラスの人にからかわれること場面もありました。
それでも変わらず、彼女は僕に好意をしめしてくれました。
ある日、クラスの男女数人で学校終わりにカラオケに行こうという話になり、僕も誘われていくことになります。
もちろんそこには彼女の姿もありました。
学校外で彼女がいるシチュエーションにドキドキが止まらず、ガッチガチになり彼女とは全く話ができません。それでも夢をみているような楽しい時間を過ごせました。
今度は二人っきりで・・そんな妄想も膨らみます。
そして、少しづつ二人の距離が良い感じに近づいてきている矢先のできごとでした。
文化祭が近づき、クラスの出し物によって、僕の運命は大きく変わります。
あがり症の僕は臆病で情けない男でした
モテる男は、やるべき時にやるきる男です。
どんなに自分が辛くても、相手のこと、周りのことを考えて行動できるのが "かっこいい男" なのです。
僕はその "かっこいい男" になれずにいました。
文化祭の出し物が演劇に決まり僕に悲劇が・・
11月に入り、文化祭の季節となり、クラスの出し物が演劇に決定しました。
「演劇なんて・・人前で話せないし脇役でいいから・・」
と願っていたら、なぜかクラスの投票でメインメンバーに選ばれるという悲劇に襲われるのです。
色んな役回りがありましたが、大勢の前で発表したいと思っている人は少なく、最後に残った役が回ってきた感じでしょうか。
しかもなぜだか分かりませんが、彼女と演技をするシナリオになっていたのです・・。
本当だったら、「やった~彼女と一緒にできる」と喜ぶべきところですが、僕は人前が大の苦手です。
そんな舞台で演技なんて僕には無理で、しかも大好きな人との演技なんてとんでもないと思った僕は、役を辞退することに・・。
本当だったら、彼女と大接近する大チャンスのはずが、辞退したことで、気まずい雰囲気が二人の間に漂います。
僕は彼女に悪いことをしたとも感じました。彼女も楽しみにしていたかもしれないのに・・。
でもそうするしかなかったのです。
僕は極度のあがり症です。そのまま役を引き受けていたら、とんでもない失態を大勢の前でさらしていたのは言うまでもありません。
そんな僕の姿を見て、誰が幸せになるでしょうか?誰も得する人はいませんよね?
僕は全校生徒の前で、かっこよく演技なんてできるはずはないのです。
そのことは、自分が一番理解しています。
好きな人との距離がどんどん離れていく切なさ
文化祭では僕の代わりに他の男子が代役になってくれました。
有難いと思う気持ちもありましたが、羨ましい気持ちもとても感じていました。
僕のクラスが披露したのは、男女数名が集まり、愛の告白をする、"ねるとん、あいのり、テラスハウス" のような内容でした。
憧れの彼女は主役となり、誰が彼女を射止めるかで、本番では大盛り上がりでした。
もし僕が役を引き受けていたら、間違いなく彼女との距離を縮められていたと思います。
本当は彼女と一緒に演じたかった・・その後悔する気持ちは十分ありました。
でも、みんなの前で、震えた声、体を見せるのは絶対に嫌でした。
なぜなら、彼女に嫌われるのが怖かった・・。そして周りに自分の気持ちがバレるのも・・。自分をさらけ出すのが怖かったのです。
自分の気持ちを正直にクラスのみんなに言えていたら、また違った展開になっていたのかもしれません。彼女に嫌な気持ちをさせなくて済んだのかもしれません。
この頃になると、クラスの多くが僕と彼女の噂をするようになっていました。
実は僕が彼女のことを好きだったことはみんな分かっていたのです。そして彼女も僕のことが気になっていることも。
だから、文化祭の役決めで、二人が一緒になるように促していたのです。二人が両想いならと、クラスのみんなが盛り上げてくれていいたのです。
そうとは知らず僕は・・。
あがり症の僕は恋愛しちゃダメな人間なんだ・・
僕がそれを知ったとき、自分がどれだけ情けない人間なのか、何もできない人間なのかと落ち込みました。
それと同時に、もう恋愛するのはやめようと思いました。あがり症の僕は、恋愛なんてしちゃダメなんだ・・。人を好きになってはいけないんだ・・。
このときの僕は、葛藤する心の拠りどころを探していました。そして一つの答えを出します。
そこから徹底して、彼女のことを何も想ってないフリをしていきました。自分の気持ちを抑え、演じました。
彼女がいるときは、怒った表情をしてみたり、つれない雰囲気を出してみたり、心とは真逆のことをするように・・。
もうこんな辛い恋愛はするべきじゃないと自分に言い聞かせ、彼女との距離を遠ざける行動にでたのです。
なぜ思ってもいない行動に出たのか?不器用な僕にはそんなことしか思いつかなかったのです。精神的に追い詰められていたのです。
以前のような彼女へのアピールは彼女に迷惑だとも考えました。自分に自信がなかった・・これが原因でした。
その後、僕は一番見たくない光景に居合わせることになります。
彼女は僕のことは全く気にしていないような、幸せそうな笑顔をしていました。
彼女が他の男子と付き合い始めました(泣)
僕が最も恐れていることが起きました。
彼女が他の男子と手をつないで帰る姿を目撃してしまうのです。
これまでなんとか堪えていた感情が爆発します。僕は悲しみに暮れ本気で数日間泣きました・・。
でも僕が自分でやってしまったことなので仕方ありませんよね?
自分の気持ちを彼女に伝えることができず、彼女の好意に応えることができなかった・・だからそうなるのは当然です。
そんな情けない僕よりも、他に魅力的な男子はいくらでもいます。彼女に彼氏ができるのは時間の問題でした。
僕はあがり症で自分に自信が持てず、勇気を出すことができませんでした。
もっと言えば、あがり症じゃなくても、当時の僕は自分をさらけ出すことができない、"かっこ悪い" 男でした。
人前での失敗がトラウマとなり、何もできない自分がいました。本当に情けない人間ですね・・。
あがり症だからモテないんじゃない
この時から、本気で "あがり症" と向き合い、本気で克服したいと思うようになります。
百歩譲って、あがり症で人前から逃げるのはいいとしても、あがり症である自分から逃げることをやってはいけません。
今の自分の不甲斐なさを受け止めて、今の自分に何ができるか、よく考えることが大切なんです・・。
当時の僕にはそれができませんでした。
あがり症の人には、僕と同じような過ちをして欲しくはありません(泣)
そして、よく言われる言葉があります。
『あがり症はモテない』
あがり症だからモテないんじゃなくて、好意を持たれていても、それに気付かないだけです。
自分に自信が持てないことからうつむいてしまい、周りをよく観察することができないでいるだけです。
結果的に、"モテない" と勝手に思い込んでしまうのです。
あがり症であったことは同じクラスだった彼女も知っていたことでしょう。それでも僕のことを好意的に想ってくれていました。
僕は決して容姿が良かったわけでも、性格が良かったわけでもありません。
そんな僕でも恋愛できました。僕の初めての初恋でした。
まずは自分のことを認めてあげてください。
必ずあなたにも素晴らしい人との出会いが待っているのですから。
彼女と撮った最後の写真
数週間後、彼女は付き合っていた男子と別れたようでした。
ホッとした気持ちと、なぜか悲しい気持ちにも・・。
そして色々あった高校生活も終わりに近づき、もう間もなくで卒業というときのできごとでした。
偶然、僕と彼女が一緒に居合わせときのことです。
彼女から突然言われました。
「翔くん、一緒に写真撮ろう」
そこには、笑顔の彼女と、はにかむ笑顔の僕がいました。
彼女は僕の気持ちを理解してくれていたのです・・。
真っ赤になった顔で映ったであろう写真は、最初で最後の二人だけの想い出です。